旅行の楽しみ方が多様化する中で、アクセシブルツーリズムの考えに大きな注目が集まっています。「旅のユニバーサルデザインアドバイザー」資格講座は、すべてのお客様の旅の目的をかなえるために、それぞれの人が持つ特性と交通や宿泊など様々なサービスを有機的に組合せベネフィットを提供することを目的としています。
今夏、資格を取得した寺田真弓さんに、学びの魅力とご自身の活動についてインタビューを行いました。
寺田さんはYouTubeチャンネル「寺田家TV」を運営しており、車いすユーザーの夫と保育園に通うお子さんの3人家族の日常を紹介しています。日々の出来事や障害に関する話を包み隠さず語る明るいファミリー動画は、チャンネル登録者数が約10万人の人気チャンネルです。
寺田さんは以前、夫と一緒にヒッチハイクしながら47都道府県をすべて旅しました。このヒッチハイクでは、地域の人々の温かい協力に助けられたり、車いすではなかなか行けない場所があったりと、旅を通じて様々な気づきを得た貴重な経験でした。
その経験を通じて「もっと障害のある人も旅行を楽しんでもらいたい」と強く感じ、誰もが気軽に外出や旅行を楽しめる社会を作り出すプロジェクトを立ち上げました。旅行を計画することや実際に「旅」をすることについて、どのような仕組みで、どのように企画するのかを知りたいと考え、「旅のユニバーサルデザインアドバイザー」の資格取得を選びました。
いざテキストが到着してみると、その内容の濃さと情報量に「学びきれるだろうか…」と少し怯んだ寺田さんでしたが、プロジェクトを作り上げるために旅行についてしっかりとした知識を得ようと、気を引き締めて取り組んだといいます。
「旅のユニバーサルデザインアドバイザー」資格は、高齢や障害の有無にかかわらず全ての人が安心して楽しめるユニバーサルツーリズムを基に、福祉と旅に関わる法律や定義、接遇の実践技術を学ぶことができます。今回受講した寺田さんは、車いすユーザー、視覚障害のある人、聴覚に障害のある人それぞれが旅に求めるものは異なることを学び、どのような準備が必要で、どういった応対が望ましいのかを知ることを目指しました。
「当事者の方でも、自分の使えるサービスを知らない人がいます。例えば、障害児のお母さんが新幹線に乗ることに不安を感じて旅行を諦めてしまったという話を聞きました。多目的室が予約できることを知らなかったためです。
そういった小さな役立ち情報でも、みんなの持っている情報をまとめて、旅に出たい人の後押しをしたいと思っています」と意気込んでいます。
寺田さんが立ち上げたプロジェクトが目指すのは、あらゆる人が旅を楽しみ休日を盛り上げること。
そのために情報を集めるサイトやSNS発信、コミュニティの開設です。
寺田さんの目指す「情報の発信」には2つの狙いがあります。1つは、様々な地域で観光や宿泊、移動手段などにおいて、寄り添ったサービスや対策を考えている場所が存在し、それが重要な核となることを知ってもらうことです。受け入れの取り組みや事例などリアルな情報を発信することで、障害者のある方も一歩を踏み出し、旅を楽しむ夢を叶える手助けしたいと考えています。
旅の組立や実行するための計画の裏付けに資格取得の学びが役立ちます。
もうひとつは、受け入れ側の意識を広げることです。障害者も旅行を楽しみたいというニーズが増えることで、需要があると分かれば、施設や環境整備も進み、好循環が生まれると考えています。
寺田さんは、旅において情報や仲間が非常に大切だと考えています。多様な人々が旅を楽しむきっかけをたくさん作り出したいと考えています。旅行者が抱える不安を少しでも解消し、思い出に残る旅行を提供することが、今後の寺田さんの活動の軸になります。
「旅のユニバーサルデザインアドバイザー」資格を取得した寺田真弓さんの、旅の情報発信と仲間づくりという取り組みは、旅行したい人と受け入れ先との架け橋となります。ますますの活躍を楽しみにするとともに、旅行を通じてすべての人が新しい世界を発見できる活動を、ケアフィット推進機構も応援しています。